1/31/2015

[&] ZEP NIGHT - ITASAKA SATOSHI



ZEP NIGHT
建築家:板坂諭 × UX / UI:鳥越康平
~ 建築家としての板坂さんが考える 「残るデザイン」とは? ~

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鳥越さん:

少しだけお話しさせてください。今回なぜ板坂さんをお呼びしたのか。
建築とUI, UXは全然違う業界だと思われるかもしれませんが、
デザインという軸で考えると、建築の思考が一番広いところからデザインを考えています。

建築は、一個の建築だけで成り立つのではなく、環境があり、都市があり、
マクロな中で一個な存在するのが建築。そういう発想でデザインしています。

UI,UXも建築の考えをつかうのは同じで、細部は違うかもしれないが、
UX業界がどう、建築がどうではなく、デザインの中にいろいろな要素がある。

建築家の方と話しをするのはデザインの勉強になるし、とても参考になる。
板坂さんは謙虚に見えますが、凄い方です。

建築物はパッと見でも凄いですが、どういう風に作っているのか?
ざっくばらんに聞ければ。自由に質問してくださってかまいません。

Google Glass のような最初のテレパシーというプロダクトを作ろうとした時、
板坂さんがデザインしました。



板坂さん:
デザインで何ができるのか?アメリカを旅したり、
その時、鳥越さんがいったい何やっているのか、教えてくれませんでした。

鳥:
その後も、ウェアラブルデバイスのプロジェクトでご一緒させて頂きました。
Zepperin も将来建築分野に進出したいと思っています。

板:
デザインラボという会社を運営していて、
プロダクト関係、小さいものから、コンセプチャルなもの、
海外のメーカーとも仕事していますし、プロダクト、空間のデザインもやっています。
去年、表参道のアパレルや、ISSEY MIYAKE の展示会のデザインも担当しました。



建築の中も住宅が得意で、住宅にもいろいろあって、
設計事務所はたくさんあるので、強みは富裕層向けの住宅が得意。
プライバシーとかセキュリティなど特殊で、経験が無いとその要求にこたえられない。
たまたまそういう師匠についていたので、それが得意です。

いままでやってきたものは、ルパン三世の漫画に出てくるような、
書斎をあけたら部屋があるような家や、
家の中で野球したいという人など、変わった人が多く、
22メートル高さ6メートルの部屋を作ったり。

ある程度経験が無いと作れないので、
建築をやっていく上で大事にしているのは「残る」ということ。
日本は 27年が平均寿命。放っておいたらもっと残りそうだが、
27年たつと、壊されている。
27年しか建っていない現状を残念だと思う。

そこで「残るデザイン」とは?
建築のことはあまり、誰も教えてくれません。
建築に囲まれた都市のはずなのに、建築を仕事にしていない人は、
実は建築のことをあまり知らないんじゃないかなと思って。

残るという話しにからむと、
聖路加は、古くていい住宅が残っています。先日気に入っている古民家が解体されてしまった。
材料も贅沢で、その当時はあたりまえだったかもしれないが。
銀座から歩いているところに残っているのはとても贅沢。
残っていることが贅沢。
一般の人は、それを壊してしまうのだというのが衝撃。
できればリノベーションして、海外のゲストを迎えたりできれば良かったのですが、
あっさり解体されてしまった。
建築知識が浸透していないから、壊されてしまう。

では、残るデザインにどう興味を持ったのか?

小学校くらいに建築をやりたいと思っていて、
小さいころ泣き虫で、夜中に布団の中で泣いていて、
父親、母親が居なくなったら、死んだらどうなる?とか考えていた。

小さいながらも、なぜかそういくことに関心があって、
そうしていたら、テレビで、スペインのサグラダファミリア教会が紹介されていて、
ガウディーが亡くなってからも建築が続いていて、
建築っていいな〜と思って。
そこで残るのが重要で、それで建築が大事だと思って今に至っている。
建築する時にどうしたら残るか?

鳥:
この中で家もっているという人は?
ほとんど居ませんね。東京だから?

板:
仕事している時に、残るデザインが重要だと思っている時に、
鳥越さんからお話ししませんか?と、
「美しいデザイン」とは何ですか?
どれぐらい喋ればいいですか? 1時間くらい。
プロジェクタで映像を見せながらであれば.....
いや、使わないで.... と言われて.....

鳥:
僕は使いましたけどね(笑)

板:
軽井沢、平屋は贅沢ですよね。日本的なものになってしまいます。
ぱっと見で日本っぽく見えます。
狙っているわけでは無いのですが。
こういう物が、27年しかもたないものと違うデザイン。
こういうプロダクトに関しては、残るという質を変えていて、
定番として残って欲しいものと、
プロダクトはコレクションとして残って欲しい。



SF MOMA の永久所蔵になったライト Mushroom Lamp.
皆さんの質問の中に「進化と残るとどちらが良いですか?」
コレクションは残る方で、それはそれで好き、
「進化」で残る方が好きです。
昔はサルだけど今は人間、進化するから残っている。
建築は進化する。出来たら終わりではなく、
鉄は伸びて、硝子はちじんで、新陳代謝させていくことが必要。
去年まで和室だったが、今年からは寝室にとか。

ブランドでやっているのですが、
何をしたいかというと、勝手くださる、使ってくださる方とのコミュニケーションがしたい。
一個一個に私のメッセージを載せています。
コミュニケーションするために作っていて、
その結果として時代性、処世だったりが付加されることで、
コレクションとして残る。
残るデザインを狙っているわけではないが残っていって、
それを整理しながら、そういうやり方で仕事をしている。

鳥:
震災の前に作ったライト。その時にタイミングとしては震災前なのですが、
原発について考えてはいなかったのですが、そこに意識を向けた。
そのプロダクトを作られて、震災が起こってしまった。
その時に、なんで原発が日常に無ければいけないのか?
それを象徴的な形で作ってみた。するとコンセプチャルなので残してみたい。
すごく。
建築とは違うスタンスでやっているのをお伝えしたかった。

// オフレコ start


// オフレコ end

4月以降は発表できます。
東京にお店があります。

そういうトップブランドとお話しをさせていただいて、
中枢まで行くと、とんでもない価格で物を売っているのに、わけがわかるのです。
1000円で鞄が買えるのに、300万円の鞄を買うのです。
中枢に入っていって、いままでやってきたこと、フィロソフィーを知るとなるほどと思うのです。
ブランドは、精神が込められていると、その価値があがる。
精神を注入するのが重要。
デザインする時に、形をかっこ良くするとか、生産性を上げるとか、
そこを絞ってしまうと、徹底的に精神を注入するということを主目的をおくとおのずと着いてくる。
それをフランスのメーカーもやっている。

おもてなし。使う人にとって、おもてなし、デザイン、精神を注入するのを
使う人のことを最大限想像する。それが UXかもしれない。
プロダクトは欠けていて、座り心地がいい、適切な価格のイス。
座ってみたときに気付くクッション性、座る人に対するおもてなしが沢山込められていると、
精神の一つを感じ取られたらいい。

建築の特徴は、住んでから発見があって欲しいと思っていて。
床と壁の間にある幅木、幅木無しでストンと壁と床をぶつけてしまうと痛みやすくなる。
下の方が 5cm くらい幅木があるのですが、
2cm , 3cm だと人間の感覚が変わる。
いまこの部屋は天井が高いので 5cm は妥当なのですが、
普通の住宅だと、5cm だと空間が狭く感じる。

ある日、旅館に行った時に、気付いたり、
人は感受性が強いので、実は気付いている。

家の中に海外から買ってきたテーブルを置くと狭く感じますが、
テーブルの高さが日本のものと、海外のものとの違いで感じる狭さ。
数年たって、ようやく気付くもの。
建築には説明しないけど、説明できるものをいろいろ入れている。

杉の板を張っている、何もしなけれ木目が流れていかない。
視線を外にでるように正目を並べています。
何も言わなくても優秀な棟梁はやっているかもしれませんが。
視線を流すのです。
言わなければわからないけど、気づきが生れればやりがいがあったな
という考え方でやっている。
UI, UX でも同じかもしれません。

鳥:
この前お客様がいらっしゃって、大企業がサービスを出していて、
うまくいかない、伝わっていない。
ユーザーが使っている時を想像できないとおっしゃる。
椅子に座って、最初に体のどこが当たる、その瞬間を想像する。
何分ぐらい座っていられる?
全然想像されずに作られていると、長く使えるものになっていない。
長く残る....につながる要素として、
木目の流れを揃えるとかはあるが、他にもあると思うのです。
まずは建築でどういうところを意識していますか?

板:
残る質が、僕の中では違う。
住宅は残る。デザインをシステムだと考える。
伊勢神宮20年に一回神社を建物を造りたくてやっているのではなく、
思想を残そうとしている、そういうシステムに興味がある。
サグラダファミリア教会は、技術的な思想を残したくてやっている。
システムによって、まだ残っていることに興味をもつ。

今は、たまたま建築ですが、プロダクト、システムで残すところに、興味を持っている。

鳥:
僕らはシステムの話しをソフトウェアと言っていて、
スティーブジョブズが iPhone はソフトウェアだと言っている、
姿形はあるけれど、ソフトウェア。音楽を視聴する体験のソフトウェアが iPod 形がそうなだけ。

Mushroom Lamp も思想が凄い。気付かなくなってしまっていることに、気付くきっかけを与える。
伊勢神宮もソフトウェアかもしれない。
周りにいる人々や、歴史が続くように。

質問
1000年残る、100年残る建築の違いは?

美しいと思うもの、自然、自然現象、夕日、虹、子供の仕草、そういうものにはかなわない。
100年残る方は人間ががんばって真似た自然のデザイン、
ザハハディドは 100年残る。
1000年残るのは思いやり。
伊勢神宮は神様への思いやりのデザイン。
システムの方は 1000年残る。

質問:
進化と残るとどちらが幸せなんでしょう?

進化の方が好き。
残る、コレクション。残っているから進化する、
進化も残る一つのジャンル。
もちろん残るのも好きだが、
どちらかというと、進化する、伊勢神宮的進化の方。
人の体も変わっていっているし、進化する方がいい。
永久に残るのは進化の方。
FRP樹脂は 100年残らない.....

ランプの製作の時に
3Dデータの図面を職人に送ったら、
どんな技術で立体になっているか行ったら、壁じゅうに図面を貼って、
なんと粘土で作っていたんですよ!
それで出来たので良かったんですが。

鳥:
図面通りに作るのが良かったのか、経験値を入れるのが良かった、
感覚を入れるのが良かったのかんじゃないですかね。

質問:
訪れたい建築は?



明日からフランスに行くのですが。
フランクゲーリーの新しい美術館。
ぱっと見で理解できない。
見る角度で全然違う。
あんまり好きでは無いのですが。
絵に出来ない。いろんな要素があって。



鳥:
プロダクトだと、いろんな線は書けない。
工業製品なので。
建築だと出来てしまう。

板:
最近出来るようになった。
なんでできるのか?航空機の設計技術が建築に入ってきて。
線が自由。XYZで育ってきた自分としては理解できない。
ザハもそうですね。
飽きないとか、そういうのが好き。
新国立競技場の今皆さんが見ているのは元のデザインとは違いますが....
予算とか建築基準法とか....

質問:
ゴシック建築、ずっと残っている。
それは民をたたえている、そういう精神が入っているから残っている。
建築を作る時に、どういう精神を入れているのか?

目黒の庭園美術館。新しくなったのですが、
作り手の思いやりがすごく緻密にやっていることにつながっていて。
お金があれば、できるということではなく。
使う人がハッピーになって欲しい、それが答え。

質問:
新国立競技場、予算と現実?

できる範囲内でやるしかない。
無理と思わない。いくら厳しい条件を突きつけられても、自分が出来るものと思ってやっている。
鍛錬しかない。建築だけやってもいいけど、そうじゃないのは、
クライアントから難しい要求がきたときに、
無理な要求を自分に課す。無理とは言わない。
出来てないこともいっぱいあるが、出来る範囲で努力するしか無い。

質問:
プロダクト作品の中で、いろんなジャンルを作られていますが、
インスピレーションの源は?

メディアがどうしても強い。いろんな情報を与えてくれる。
そこに自分も載らないと、どうメディアにとりあげてもらうか?と考える。
建築をやっているなか、総合技術だと思っていて、
こういうものを欲しいと言われたら、世の中になければ作ってみようと。
常にアンテナを張っているのがインスピレーションになるかもしれない。

質問:
自分から手をあげても作ってみたいもの。

自分で作っているのが現状ですが....
美術館を作りたい。
建築をやっている人は誰もが作ってみたい。
建築の教科書、だいたい美術館は華々しく載っている。
あそこより良いもの?
みんな、建築家がみな終着点としてやっている。

質問:
日本メーカー、イノベーションを起こせていない。
ベンチャーの時にはおもてなしが込められているのに....

アップルの成功、日本のメーカー元気無いですよね.....
サムソンも今、元気無くなってきていますが....

鳥:
いろんなところを見ているので同じ症状なのですが、
組織、部署が分かれている、離れているだけ。
日本企業の中は、優秀な方ばかり。
組織が分かれているだけでコミュニケーションが無い。
話せばいいものができるのですが。
Google は組織ではなく、人で成り立っている。

質問:
サンプルで、白い建物のシミュレーションがありましたが....

鳥:
一言でいうと、移動式茶室。
一カ所に置いておかない。
同時想定していたのは、東京とか、庭を巡っていこうという。

板:
おもてなしをしようという、なんでも答えてくれるサービスを考えている時に、
それが空間なら面白いのじゃないか?と渡したのがこのデザイン。
おもてなしと考えると、お茶、お茶が感じられれう空間であれば、
世界中をめぐっても、解ってもらえる。

鳥:
テレパシーの時もそうなのですが、板坂さんは仕事が速いんですよ。

板:
夢中になって気付いたら朝6時間ぐらいで。2,3分後に井口さんから「採用!」って

鳥;
家を動かすという発想。
坪単価で77万。それっておかしいのかな?と思っていて、
もっと気楽に家が建てられて、地面に設置されていなくて、固定されていなければ、
安くできるのでは無いかと。

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