12/18/2009

[&] SIGGRAPH Asia 2009 (Back to the Tradition from the Future)

Back to the Tradition from the Future
---------------------------------------------
CGアーティストの教育方法
Clone Monitoring と Animation Template の手法の紹介

Clone Monitoring を採用した理由。
通常は講師と受講者が対面して、講師の操作する画面を前面に投影していることが多い。
そうではなく、新人の画面が常に講師の方から見えるようにして教育している。

スクリーンは細かいものが見づらいので、
講師の操作画面モニターを、受講者のセカンダリモニタに表示するようにしている。
メニューの位置などの細かい説明がわかりやすい。
理解度が高くなるので、同じ時間あたりに教えられる事柄が多くなる。

新人研修の後、現場で鍛えられるが、だんだんと成長曲線が低下していく。
理想的な成長曲線は、常に伸びて行くタイプ。
成長を妨げるものを打破する手法が必要になる。

なぜこのような成長限界があるのか?
他人の仕事やテクニックを見る十分な機会が無いことが要因。
ゲーム制作は PC 上で行なう作業。PCでの作業を外から見ても良くわからない。
もし自分が普段おこなっている作業と違うテクニックを見ることができれば、
成長限界を突破できるかもしれない。

似たような分野である、アートと工芸を参考にした。
アートは素晴らしい作品を見ることによって学ぶことができる。
毎日の作業からいろいろ試せる環境を作ることで実践できる。

もう一つのアイデアはエクストリームプログラミングの手法、
ペアプログラミング手法からアイデアを得た。
クローンモニターという名前をつけた。
講師と受講者のお互いのモニターがお互いに見られるようにした。
お互いにやっていることを見られるような環境を用意した。

クローンモニタリングの成果;
ペアプログラミングと同様の成果を得ることができた。
お互いに作業をなんとなく見るだけでも、作業の違いがわかり、
「見て盗む」ことが可能になった。
自分とは違う制作手法を知るだけではなく、
それによって物が作られる過程を見ることができるので、
学ぶ意欲が向上する。
一度そういう体験をすると、自ら学ぶという姿勢が形作られる。
相手のところで何か問題がおこっても、すぐに反応すること、対応することができる。
命名規則の間違いや、無駄なデータがあるかどうか、アニメーションの間違いなども
すぐに指摘することができる。
不謹慎にも YouTube をみてさぼっているのも、見られてしまう(笑)
YouTube を見ていることがばれるようになれば、いつもの2倍のスピードで仕事できます(笑)

似ている仕事をしている同士を見ることだけではなく、
違う仕事をしている同士の画面をみつことでも、あらたな発見ができる。
例えば 3Dアーティストと 2Dアーティストの画面をつなぐことによって、
お互い、新しいツールの使い方を覚えることができる。
普通、新人に作業のスピードアップする方法を教えても、継続して実践してもらえない。
そのコツを実際に実践してスピーディに作業しているところを見せると、
説得力があり、真似するようになってきた。

クローンモニタリング独特の面白い結果を得ることもできた。
お互いの画面を見ることで、会話の量が増える。
より潤滑にコミュニケーションをとることができるようになった。

どのように人材育成するかを考えることで、机の配置を調整する。

問題点:
一度クローンモニタリングに慣れてしまうと、
スクリーンセーバーのように感じてしまい、見ることが無くなってしまう。
クローンモニターは半年から1年をめどに実施するのが適していると思われる。
まだ事例が少ないので、全般的にあてはまるかどうかわからない。

◆Animation Template
ゲームアニメーターは不足しがち。常に育てる必要がある。
アニメーションはモデリングなどに比べ、学ぶことが難しい分野である。
アニメーションの善し悪しをセンスの問題として評価されることもある。
どうして 3DCG のアニメーションはモデリングより難しいのか?
モデリングは目で見える概念だが、
アニメーションは「時間」という目に見えない概念なので難しい。

ポーズ、キーフレーム、タイミング、リズムに別れる。
伝統的な手法を調べた。2D,3D の違いはどこにある?
原画と動画の違いはどこにあるのか。
キーフレームと中割りには師弟関係がある。
原画が重要なポーズとタイミングを押さえる。
動画の実力がついてくると、原画の修正、原画を描く作業にステップアップすることができる。

3D には原画、動画という関係が無い。
たいてい一人で作業することが多い。そしてリードアニメーターにチェックしてもらうことになる
そこでこの原画と動画の関係、
うまい人のアニメーションに触れる機会をつくることを考えた、

この手法に「アニメーションテンプレート」という名前をつけた。
具体的にはすでにアニメーションがつけられているデータをいながら、
同じシーンに、新しいキャラクタで同じアニメーションをつける作業をしてみる。
これは原画をトレースするのと同じ作業。
いままでもそっくりの動きを作る教育は行なわれてきた。
今回は可能な限り作業の単純化を考えた。

アニメーションにデッサン力を適用する方法を考えた。
アニメーションの要素である、ポーズとタイミングを学ぶようにした。
テンプレートにしているアニメーションのキメとなるポーズをまねるようにした。
(この段階では、タイミングは無視)
ひととおりポーズをつけた後で、その後動きのみをみてキーフレームを調整する。
 キーフレームのみを調整すれば良いので初心者も戸惑わない。

要素を分解して教えることで、アニメーションづくりを迷わないようになる。
おかしいアニメーションの時に何がおかしいのか気づけるようになる。

スクワッチ/ストレッチなど基本的なことを学んだだけの人の場合。
制作当時は 80%のできだと思っていたが、今みるとヒドイ。
うごきがメチャクチャ。やりたいことはあるが表現できていない。
ポーズそこそこきまっているが、タイミングやリズムが悪い。
その後、アニメーションテンプレートに挑戦。
本当に力がついたのかどうかをチェックした。
標準的な教育用サンプルである、くい打ちアニメーション。

まねをすることで良いセンスを身につけることができる。
見落としがちなディテールに気づいてまねることができる。
既存のアニメーションを読み込んで使うだけなので、非常に手軽にできる。

問題点:
ゲーム特有の瞬間的なアニメーション、待機アニメーションなどを例にすると作業が苦痛。
まだ実験的な段階。効果は感じている。
アニメーション学校で同じことをしているかもしれない。

ロトスコープに似ているかもしれないが、実写は情報が多すぎて、参考にするのは難しい。
アニメーションの復習は難しい。虫食い問題は役に立たない。

今回マインドマップを利用した。
効果の復習方法として役立った。
アニメーションに重要な要素、動きの喚起やコントラストなど気づいたことを記入していく。
確認する側もすぐに分かる(学習度合いが)すぐにわかるのが良い。
復習のために問題を用意しなくてもいい。

トレーニングには cable, LCD, Video Splitter と「勇気」が必要。
教育現場ではアニメーションを教える講師の確保が難しい。
2-3年の在学中では、ポートフォリオに載せる作品を作るだけで精一杯で
アニメーションを学ぶところまでは難しい。

Q&A
Q. アニメーションテンプレートをまねる場合、強引にキーをつけるような場合はなかったか?
A. 単純にシーンを使うとそういう例もある。なので、厳密にアニメーションを再生しながら
なるべく単純化して学ぶようにした。機械的な感じがするが、それぐらい単純な方が学びやすい。

Q. クローンモニタリングの実施規模は?
A. 非常に少ない。試しに 3,4人。でも皆で同様の効果を得ることができた。
モニターをつなぐケーブルが 5m ほどしか無いので、机が離れすぎると繋げない問題があった。
どうしても小規模から行なう必要があるかもしれない。

Q. クローンモニタリングを長く続けていると慣れてしまって見なくなるのはどれくらいの期間?
A. 最短で 1-2 ヶ月、最長で一年くらい。
効果は三ヶ月くらいでピーク。あとは外すの面倒だからつないだままの人もいる。

Q. 見せたくないページを見ているときにはどうする?
A. 実際にはもう一枚モニターを用意して、人から見えないモニターも用意している。
実際はトリプルスクリーンで運用している。

Q. この手法を受ける人材の選出はどのようにしておこなったのか?
A. 隣にいた人と後ろにいた人を選びました(笑)
だいたい1年目の人、2−3年目の人を対処とした。
それ以上の年数の人は、ものすごく拒否する。

Q. アニメーションテンプレートの手本は?適切ないいお手本の選出方法は?
A. まずは手付けのアニメーションであることが重要。
すでにあるものを移すので手間がかからない。
まずは色々やってみるのがいい。
アニメーションをつけていくうちに、本人がいいものを分かってくるようになる。
それも効果のひとつ

Q. アニメーションテンプレート、アニメートごとの動きの個性は?
A. 大規模にやっていないので、そうなるかもしれない。
基本は昔ながらのテクニックを使う(アートや工芸などの)こと。
皆でデッサンをやっても、それぞれ違うものになる。
ちゃんとしたアニメーターになれば、それぞれの個性は生かせると考えている。

Q. テクニカルアーティストの仕事。スクリプトの作成はどの範囲?
A. 基本はアーティストが必要なツールを用意する。
ゲーム本体に関わるようなものは作らない。
一部、全体でつかうコンバータを作る場合もある。
たとえ一人しか使わないものでも作る。

Q. 勉強会について。任意参加?必須参加?全然参加しない人は?
A. 基本的には任意参加。参加しない人もいる。
 どうしてもついていけない人は、どんどんついていなくなる。
 強制的に参加してもついていけないので、マンツーマンで指導する。仕方ないこと。
 皆がみんなそうなってしまうと困るが、プロとして仕事しているので、各自でがんばってもらう。