8/06/2014

[&] takram academy - Kohji Robert Yamamoto



研究から作る表現・観察から作る表現
@robamoto 山本晃士ロバート(アートディレクター:ユーフラテス)
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山本晃士ロバートともうします。よろしくお願いいたします。
今日しゃべることなんですが、
研究から作る表現はユーフラテスの基本なのですが、
実際にどうやって作っているのかを紹介します。

後半は観察から作る表現というのは全然まとまっていないのですが、
皆さんに課題を出したのを見ながら、一緒に観察から物を作ることを出来れば。

ユーフラテス「EUPHRATES」
研究をベースに活動している、クリエイティブグループ
慶応大学佐藤雅彦研究室の卒業生。
2005年から。7名で活動。
アートディレクターになっていますが、映像を撮ることもあり、
はっきりとは決まっていません。

Eテレ 2355 0655
Eテレ ピタゴラスイッチ 考えるカラス コーナー制作
21_21 DESIGN SIGHTこれも自分と認めざるをえない展
「指を置く」のアートディレクション

書籍
こんがらがっち劇場
こんがらがっちあっちこっちすすめ!の本
月刊かがくのとも「中をそうぞうしてみよ」3冊

■研究から表現を作るとは?
ユーフラテスの特徴

1.「考え方」をもとにつくる
2.「研究」が基盤にある


[動画] 新しい生物SP ケシゴムザウルス カクザザトン

全部で8本
「新しい生物」の基盤の考え方
●身近なものに「生物」らしさを見出す = 見立て
●社会/生態を表現する
目鼻をつけるのではなく、消しゴム感を活かした生物らしさ。
その辺にあるものから。
表情を作ってキャラクタナイズするのではなく、社会性で生物らしさを作る。

http://www.nhk.or.jp/kids/program/pitagora_historic_data.html
 [動画] こんなことできません


「こんなことできません」の基盤となる考え方
●ピクしレーションの手法を「作り方」まであわせて見せる
●家庭でも作ってもらえる
●メディアリテラシーの教育

テレビ画面自体で作り方を上手く見せられるのでは無いかと思って。
意外と YouTube に上げている人がいて....
一回募集しました。もっと面白いアニメーションを子供と撮影して送ってください。
結構な数が届いて、面白いものを数本選んで、放送しました。

■共通すること
●分かることが面白い
●人間は、生まれ持った能力を使うこと自体が楽しいのではないか?

実際はバラバラにとった写真をつなげただけなのに、
変な動きをしたり、独特のものに見えてきます。
写真をつなげるだけで分かってしまうのが面白いと思って、
人間誰しもが持っている能力。能力時代を作るのが面白い。

http://euphrates.jp/ballet-rotoscope
[動画] ballet rotoscope

経済産業省の支援で作った映像です。
2355 に不定期に流しています。

■baleet rotoscope の基盤となった考え方。
●rotoscope
●計算機科学

rotoscope : 実写映像を正確にトレースして描くアニメーション手法
1915年、アメリカのフライシャー京大によって開発されたテクニック

 [動画」 白雪姫(1937)

この rotoscope の手法を、単なる「輪郭線」にとどまらず
何らかの情報を加える手段として使った。

手の先や、肘、頭の先、肩、足の先の点をパソコン上でトレースし、
全く新しいアニメーションを載せようかと思ったのですが....

凸包(計算機科学で扱われる)
幾何的な問題をいかにしてコンピュータで解くか?という
コンピュータサイエンスの一分野。その考え方をいくつか試用しました。

三角形分割
平面上にある沢山の点を三角形に分割していくか。
標高をポリゴン化して、三角形分割するなど。

モーションコントローラーカメラを使って、
誰もいない風景も撮影しました。
ゴムが張り付くような独特の質感が生まれます。

「ゴムの張力」や「線がまとわりつく感触」まで表象できる

2.「研究」が基盤にある

表現
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研究会I 課題
研究会II 個人研究
EUPHRATES NIGHT
脳科学勉強会
理科実験の会

水面下から出て行って、表現し、社会に発表していくことを目指しています。

0655, 2355
毎週月曜日に、たなくじ

http://www.nhk.or.jp/e0655/
 [動画] たなくじ

●外部企業と共同で行っていた研究が元
●「テレビの価値を再発見する」という研究

テレビCMと携帯電話を使った「クーポンCM」
2006年当時、テレビを使って双方向性があることをやってみては?
という企画、アイデアの一つ。当時はガラケー時代。
アプリと連動というのは出来ない時代で、QRコードはあったが、
テレビで QRコードを読み取る、呼び出して撮るのは面倒。
もっと簡単に最低限皆がすぐ使えるような素材を作って、
多少のインタラクティブ的なもの、
携帯電話であれば、何パーセントかはやってもらえると思って。
クーポンのようなものを考えて作ったもの。

●ほんとうに参加してもらえる、あたらしい「参加型」テレビ
●参加のハードルを限りなく下げる

■理科実験の会とは?
中高の教科書に掲載されている実験を「実際に」再現する会。
2〜3人が指導役となり、一ヶ月に一回のペースで。
誰もが知っている実験でも目の前でやれば面白く、大人でも声を上げてしまう。

理科実験の会での問題意識
●実験映像そのものを見返しても面白くない
→実験が「地続きの場所で」行われていないと効果が薄い?
●実験やワークショップの面白さは本や映像に展開できるのか?

http://www.nhk.or.jp/e2355/
[映像] 夜更かしワークショップ 2355 金曜日限定 10数本制作

夜更かしワークショップの構造
●太田光さんが進行役
●田中さんに指示する。一方、視聴者への説明も挟む
→田中さんが視聴者の「代行者」

テレビで映すと、自分もテーブルに着いているような主観的に
見えるような映像にしている。

●題材は身近なもの →追実験しやすい
●視聴者の高度なリテラシーあっての映像
(しゃべらないで、受け身の状態は特殊)

http://www.nhk.or.jp/rika/karasu/
 [映像] 考えるカラス

理由を言わないで終わってしまうのですが.....
科学実験の面白さをテレビで出すのは難しい。

●答えや結論に向かうのではない
●「その場で考えた」アイデアをどんどん試していく、ドキュメンタリー風の実験映像

その場で何か巻き起こると、意見が出てくる。
何かトライアルをしてみたくなる、周りから声がでて、
その面白さが理科の面白さを体現している。
その面白い現場をテレビで見せられないかと....
ボツねたも沢山あります。凄いあります。

テレビで表現できることかどうか?というのも重要。
映像で見ると分からなくなるものもあり。
打ち合わせの様子をもう一度ライブっぽく撮り直し、20本ぐらい作りました。
企画の数は、5〜6倍は作っています。
一個一個は、その場でみると面白いのですが、映像で見ると分からなくなるのが
大半で、撮ってわからなくなるので、ボツになるのが多かった。
→いままさに起こっていることをテレビで表現する

+企業との共同研究
外部の企業と一緒に研究しているもの
NIMS 「未来の科学者達へ」材料研究機構のプロモーション映像

形状記憶合金が研究のひとつ、実際に目の前で見ると何回見ても面白い。
物性の面白さをそれだけ見せるのでは映像ではわかりにくい。
シーソーのような機構を作って、こういう作りの実験映像を作り明日。

●NIMS(物質・材料研究機構)を丸一日かけてまわる「ラボツアー」
●NIMSの技術者の肩と直接コンタクトを撮りながら映像づくり
自分たちだけではできない

1.考え方をもとにつくる
2. 研究が基盤にある
3. それらを、出口となるメディアに合わせた表現へ定着させる

実際には映像ではなく、本の方が伝わるもの、展示の方が伝わるものもあり、
ちょうど良いメディアに合わせた表現をしたいとかんがえている。

なんで考え方を研究を基にしているのか?

1. 強固な考え方を基盤にすると、個人が持つ文脈によらない表現になる
2. 考え方を言語化しておくと、表現を考える際に適切なサイズのルールになる

いつも課題を探していて、何かこの考え方が面白い!というのがあれば、
見立ての考え方、日常のものを使って、見立ての考え方で
全員に課題として出す。一週間後に発表し、
一週間後集まってきて、課題に対しての回答を持ってくるのですが、
いい課題を作ると面白い表現になる。

→まったく自由な状態から表現を作るのは、とても難しい。
真っ白いキャンバスではなく、課題の枠のなかで面白いもの、
枠をちょっと超えた方向性が作れる。
良い課題を見つけることで表意表現がつくれる。

世の中の文脈から離れた探求から作った表現には強さがある。
研究は「鉱脈」を探すこと

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■観察から作る表現
どうやってアイデアを考えているのですか?
それは答えられない質問。

ここからはまだ未整理であやふやの話しです。
良い鉱脈や課題をみつけたあと、
結局は何らかのジャンプが必要。がんばりましょうとしか言えません。

新しい生物の角砂糖案、コーヒー豆に混ざるとレイヤーになる例、
模様ができるシーンがあると思いますが、
そういうのを思いつくと、いけるな... と思う。
ちょっとしたジャンプがあると、テレビでながせるレベルになる。
僕も分からないのですが。

ジャンプを作る訓練として....
まだ世の中に知られていない「面白さ」を身の回りからすくいあげる

ひょっとしたらこういうことを続けていけば、うまいジャンプを見つけられるのかな〜と

普段考えていることで、世の中的には知られていないのだが、個人的には気になっていること。
集めてきたことを他人に伝えることができると、今までにない表現になる可能性があります。



●開けないでください。空っぽです。 余計な言葉。「明朗会計のお店」
●能力が拡張されることが面白い。本来自分にはできない能力が発現すると気持ちがあがる
●消えづらくなったホワイトボードの文字を強引に消すと、輪郭だけが残り、文字の中身が消える。
 予想外のことが起こると。理由を考えてしまう。許容量が超えるとびっくりで終わってしまう。
●紙にペンで書いている音は気持ちよい。
●書いている音を大きくして聞きながら線を書くときれいな線が描ける
ナレーションブースに入ると、自分の声がヘッドフォンに返ってきます。
なんかのトラブルで自分の声が返ってこないと話しづらくなります。
●満員電車の中で起こる意識コミュニケーション。次に降りそうな人。無言のコミュニケーション。
言語化されていないが、世の中でやっていることはあって、
改札で自分のすぐ前を歩いている人がエラーが出たら、自分がとどまるか、横に移動するか迷います。
一瞬のゲーム性が生まれている。
最寄り駅が築地駅、終電間際は皆急いでいる。きわどい時間。階段の先にいる人が自分のセンサーになる。
●セブン銀行の ATM の音、違うチャネルから情報が入ってくると、意識が集中する。
都営三田線、白金高輪が終点で、乗り換えないといけない。
寝ちゃっている人がいる状態で、その電車を2,3回、ON/OFFしたらみな起きました!
●マンションの勝手口の鍵問題。沈黙的な勢力争い。
言語化することによって、後から扱えるようになる。同じような状況の時にパッケージとして呼び起こせる。
●建築設備配管に並べられた空き缶。無意識的な行動、深沢さんがうまくプロダクトにしている。
実物にはできる発見だが、メディアを通したものにするのは難しい。テレビ、本、なんらかの
メディアを通して世の中に発表するものは難しい。実体をもった展示に使えるかもしれませんが....
●AKB48, SKE48, NMB48, HKI48 あいうえお順に「エ」に並ぶように
●毎日散歩で合う名前も知らない老夫婦が、写真を撮ってプリントしてくれる。おつきあいの微妙な距離感。
●駅の雨漏りアート、応急的に直している様子。たぶんメジャーな面白さになってしまっている。
●サッカー犬。観客だけはルールを知っているというコミュニケーションの楽しさ
●高速道路走行中の飛び石。非常に強い意識。
●六本木のホームレス。よく知っている他人。 駅の青いリュックの人とか。
●タッチパネル式自動販売機。通常の自動販売機は価格のボタンを押すから。 一般化するのは難しい。
●ロッカーのダイヤルキー 4桁の番号。蓄積された痕跡によって秘密があばかれる。セキュリティを高めると利便性が....
●蝶の影。影を踏んでしまいました。影という可視化された存在と、現在の蝶とか交錯した。転用するのは難しいかも。
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●文脈によらない面白さを見つけることに慣れる
●他の人にその面白さを伝えられるか試してみる
●形式は「話」がベストなのか、「映像」なのか「本」なのか

個人的におもしろかった事柄をうまくメディアののせられれば.....