10/09/2014

[&] the technium - Kevin Kelly



「テクノロジーはどこに向かうのか?」『テクニウム』
ケヴィン・ケリー×若林恵×服部桂×内沼晋太郎
http://bookandbeer.com/blog/event/20141009_bt/

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多数お集りいただきありがとうございます。
この難しい本をがんばって読んでくれた人に感謝したいと思います。
今回はこの本をまとめてお話しします。
一番楽しみにしているのは皆さんと対話することです。

ダーウィン理論が出てくる前には、
ひたすら蝶の標本を集めるのが生物学でした。
そこにダーウィンが来て、さまざまな種類がどのように関係しあって
分類できるのかを体系化しました。
今渡したテクノロジーを観ると、ダーウィン以前の生物学のように、
セオリーの無いまま羅列されている状態です。

我々はテクノロジーでやっているのは、ただ集めて
標本にしているだけで、ダーウィン以前と同じで、
テクノロジーという定義もあいまいです。

テクノロジーとは新しいもの。
ぜんぜんまだ役立っていないものをテクノロジーという考えもある。

Technology is anything that doesn't work
Danny Hills

生まれる前から有るテクノロジーはちゃんと役立って、働いていますよね。
この二つのテクノロジーは似ていますが、
左は石器、右はマウス。あまり働いていないかもしれませんけどね(笑)

この二つのテクノロジーのうち、一つは週末に工作すれば作れるようなものです。
マウス一つとっても何百ものテクノロジーが 100 ものテクノロジーの集合です。
その 100 の下にもまた何百ものテクノロジーの集合で出来上がっています。

ハンマーがのこぎりがつくり、のこぎりがハンマーを作るように、
テクノロジーは相関関係にあります。
そこでお互いに助け合うテクノロジーをテクニウムと呼ぶことにしました。
これただ一つのテクノロジーを指すのではなくテクノロジー同士が結びついて
お互いをサポートする体系のことを示しています。

このマイクスタンドや椅子は、生物ではありません。
けれどテクニウム全体は助け合って、生物のような振る舞いをします。
そのテクノロジー同士が、欲望や要求によって結びついている。
あるロボットは電気が切れると、電源を探しにいって、コンセントを指すというような
「欲望」的な行動をします。
このロボットとコンセントの間に立ちふさがると、
ロボットが何かを欲しているということを感じることができました。

wants を欲望と訳すのは語弊がありますが、
植物は光を欲する。と、そういうことです。
私はテクノロジーは総体において、一つの欲望や、目標や
傾向を示す、システムだと考えています。

この全体は、アジェンダとしては、一つのモラル、
そういう傾向をある道徳と、一つの傾向が道徳のような要素を示します。
ある向かう方向をテクノロジーの持っている wants と考えます。

テクノロジーの wants はテクニウムの原題ですが、
雑然としてテクノロジーを解き明かしたくて書いたのがこの本です。
どういう風に書く事になったかというと、
50年代に生まれた大発見と関係があります。
そのころ DNA が明らかになり、それは情報の構造と非常に似通っています。
生物を扱う情報の構造と、機械をドライブする構造は非常に似ていることがわかりました。
われわれがやろうとしているのは、テクノロジーをバイオロジー的に
理解しようとしたのです。

進化というのは、どういう傾向、または wants を持っているのか?ということです。
生物科学をやっている人にとっては、非常に論理の多い概念であることがわかっています。
私は、非常に長期的な意味での生物の進化を長い目で観ていると、
非常に複雑になってきているということがわかります。
進化をみていると、バクテリアから進化してきた、進化の課程があります。
単に階段を登るような感じではなく、進化は複雑な様相を示します。

複雑なものはさらに複雑になり、単純なものは単純なままでいることがあります。
観てみると、地球上の全ての主は細菌から人間まで、何らかの形で進化しています。
生物の進化をずっと観てきましたが、多様性を増し、個別に進化し、
相互に結びつき合い、一般化し、偏在化し、感受性をもって
心を持つような進化をしているし、秩序が増していく性質があることがわかります。
テクノロジーの中でもこのような傾向を観てとることができます。

蒸気エンジンの火花よけも蝶の種類のように、ありとあらゆるバラエティがあります。
個別化、専門化を観てみると、
ハンマーは多様な、専門的な個別の使用目的に合ったハンマーが存在します。
カメラの進化を観ても、普通のカメラ、水中カメラ、赤外線カメラと、
どんどん多様化していきます。これからもこの多様化を続くでしょう。

中性から進化してきたカブト、甲冑のカブトの進化は
生物の進化のように系統化することができます。
それで、私は生物の大分類、六つの分類を、
植物、動物、菌類、などの体系のようにテクノロジーを位置づけようと考えました。
この6つ生物、テクノロジーは7つめのキングダムであると。
7つ目のキングダムは何を欲しているのか?と。



生物の持っている進化と同じ要素をもっていることがわかります。
長期的には同じ傾向を持っていることがわかります。
ここでひとつ困ったことはあって、
テクノロジーで新しい解決を行うと、それによって新しい問題も発生してしまうのです。
その困ったことというのは、ほとんどの問題は、
過去のテクノロジーのせいで起きていることがわかります。
そこで我々が考えるのは、メリットもあるし、害もあるし、
両方を考えてみると、それらは中立的なものだと考えられます。
両方が相殺しあってそうなっているのでは無いと考えます。

私がみると、テクノロジーの良い方はほんの少しですが、
テクノロジーの悪い方に勝っていると思います。ほんの1パーセント程度ですけれど。
何がいいのか?というと、
新しいテクノロジーで、選択肢が増えるのは良いことです。
その選択肢がさらに広がるということが良い意味で、
1% の良い部分を構成しています。

ここでものすごく馬鹿げたアイデアを言ったとします。
そうした場合、そこで馬鹿な事を言うのを止めさせるのが正しいのでしょうか?
こういう風にした方がいいのではないか?と
より良いアイデアをぶつけた方が良いのではないでしょうか?

悪いテクノロジーがあったら、どうすれば良いのでしょうか。
それに体する解答としては、止めてしまうとか、使わないように
すれば良いのでしょうか?
それよりももっと良いテクノロジーを使う方が良いのではないでしょうか?

より良くテクノロジーを知っていには、
環境に優しいのは、良いテクノロジー?
そういう意味で、テクノロジーは生命と相互的、互換性がある、
生命に匹敵するものであることがわかります。

それが変な馬鹿げたアイデアであるかもしれませんが、
地球環境にやさしいとか、メリットを見いだしていくわけです。
テクノロジーに体する時は、子供を扱う親のように
駄目なアイデアでも正しい行いをするように導くのが大事です。

DDT は何百万ヘクタールにまかれ、環境破壊をしていると言われました。
これは正しく使って、蚊を退治すれば、マラリアを防ぐことができるテクノロジーなのです。
テクノロジーは何を望むのか?
作用、多様性、新しいチョイス、オプション、別のやりかた、チャンス、可能性、自由とかを
テクノロジーは生み出していきます。

そこで最後に一つたとえ話をしましょう。
モーツァルトがピアノが生まれる前に生まれていたらどうなっていたでしょう?
彼自身にとってばかりではなく、文明、音楽にとって大変な損失でしょう。
ゴッホが油絵の具の発明の前に生まれていたらどうだったでしょう?
世界にとって大変な損失でした。
エジソンが映画の技術を発明する前にヒッチコックが生まれていたらどうなっていたでしょう?

今の時代で考えてみると、これからの未来、未来の天才達のための
テクノロジーがもし無かったとしたら、どういった損失になるでしょう。
という意味によって、未来のためのテクノロジーを発明する義務があるのです。

テクノロジーというのは商業的に製品を作ったりするのではなく
もっと意味のある、宇宙的な意味では無いでしょうか?
こういう複雑化し、多様化する力は、ビッグバンの時に
動きが始まっていて、生命が生まれる前からこういう力はあったのだと考えられます。

自己組織化は、エネルギーがあったところから、分子や原子になって、ICに結実する。
これは遥か昔から一環して働いてきた仕組み。
宇宙でみると、星になり銀河になり、生物になり、
ジェットエンジンのようなテクノロジーになり、一環している。

そういうテクノロジーをあつかったり、それに関わるということは、
動きに加担したり、もっと先につながる流れの一環である。
ただ単純にはしごを登る、降りるということではなく、
それを外の方向にひたすら向かっていく力です。
それは、より可能性を増やしていく方向に広がっていくのです。

テクノロジーを望んでいるのは我々の可能性を増やしていくということなのです。
この話しを聞けば、本を読まなくてもいいですね!(笑)

kk@kk.org
@kevin2kelly
http://kk.org/thetechnium/