7/21/2012

[&] Augmented Human @ AXIS



暦本純一先生の特集が、雑誌AXISで組まれたのを受けて、
講演会が開かれました。60分という限られた時間の中、
十何年もの間、最先端の研究を率いてきた暦本さんならではの
示唆に富んだお話でした。
西海岸系スタートアップにもつながる「問題こそが重要」
という言葉が、強く印象に残った!

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よい問題に着眼することがまず大事
解決できない問題を扱っても仕方ない。
すでに解決された問題を再度解いても仕方が無い。
しかし、アイデア(解決策)が先に来て、そこから問題を逆算することもある。
最初の思惑と違う問題にしてストーリーがつながることがある。
何を問題とするかで、欠点と利点は紙一重。
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インタラクションからインテグレーションへ:人間・テクノロジーの未来

私は 2007年に東京大学に移りました。
SONY とクウジットと三つ掛け持ちでやっています。
最近やっている Augmented Human を中心に、私なりの視点ではなしていきます。

Augmented Human とはなにか?
工学的なバックグランドを持っていますが、
テクノロジーが進んでいくと、人間そのものの能力が
テクノロジーによって強化されるのが長いスパンでの方向性だと思っている。
それには身体の拡張とかも含んでいます。

我々の事例から、皆さんと一緒に考えていきます。
かならず、古典的な GoUI (good old fashioned UI) が紹介されます。
人間とコンピュータの境界線は消えて行くものだと思っています。
コンピュータを使うと私自身も変化するし、
独立して進化しているものではなく、お互いに影響しあって変化しているものだと
考えています。

人工物/コンピュータ、人間/社会
AR Augmented Reality 拡張現実会
この言葉は最近流行って来たと感じている人も多いですが、
歴史は古く 1965, Ivan Sutherland が作ったものが最初です。




これは当然液晶が無いので、小さなブラウン管とミラーを使っていました。
そのミラーをハーフミラーにしていたので、現実の中にコンピュータの映像が
出てくるようになった。ARの事始め。
私自身が知ったのは高校生時代で、大変感化されました。



NaviCam :1994
携帯電話にはまだカメラが搭載される前の時代。
携帯電話が大きなディスプレイがあって、カメラが搭載されていて、
現実世界をナビゲーションしてもらえるものだと思っていた。
ジャイロセンサーを組み合わせると、空中に情報を出すことができる。
ARの原型のようなものを作っていた。
そういうものとコラボレーションで使ったらどうなるか?
その装置と装置の間を Shared Virtual Space として CG が浮いている感じ。
今の現実的な ARに近づいてきている。
SONY CSLで研究としてやってきたが、それが商品として近づいてきた。



1996 CyberCode
マーカーを使って CG を合成される。
最近になると、ゲームデバイス。PlayStation、PSPで遊べるようになってきた。

2009 Markerless AR
渋谷の街に、マーカーが無い景色を認識して、情報を付加する。
現実世界と情報空間を一緒に見られるのがシンボリック。

Augmented Human と考え、もっと広げられる。

AR: 二つの考え方。
現実に情報を付加する。
人間の近く能力を増強する。

必ずしも情報を合成するだけでなく、様々な可能性がある。
ドラゴンボールのスカウター
Google の Project Glass。Google の情報検索で知力が増強される。
そんなに新しい話ではない。




1962 Duglas Engelbart
HCIの神様。60年代に GUI の基本的なほとんどのものを作った人。
我々が使っているマウスを発明した人。
Duglas Engelbartがマウスのことを聞かれた時に、
「マウスは人間の知力を拡張しようとする壮大なプロジェクトの一部分にすぎなかった」
と答えた。



1945 Vannevar Bush "As We May Think"
ライフログのデバイス。
カメラでどこで見ているのかを記録し、マイクロフィルムで記録しつづける。
目のところに切り込みがあり、目とデバイスをとても意識していた。

Hardware: Aided Eyes from rkmtlab on Vimeo.


Aided Eyes
目の視線情報をとらえて、コンピュータを作ろうというプロジェクト。
普通の ARは目の前に映像が出てくる。
情報がいっぱい出てくるが、情報爆発してしまう。
現実の映像も複雑なのに、欲しい情報だけが欲しい。
視線情報の先に、必要な情報のみを載せていく。
目の情報はいろんなことを物語っていて、
ものを着目してみる時の目の動き、
ぼーっとしているとき。
本を読んでいる時、
視線だけでも、その人のある程度の感情を推測できる。

注目している部分の画像検索、それに関する情報を、見ていたものを
覚えていてくれるコンピュータ。
OCRで翻訳して返してくれるとか。
街を歩いているハングル文字の看板を見ると、翻訳を返してくれたり、
一週間前に会ったその人の情報を引き出してくれたり。
個人と情報が結びつくと、新しい検索エンジンができる。
Google は何でも検索できるけど、自分の身の回りのことが検索できない。
「昨日食べた夕食」とか、
「三週間前にあった人」とかが検索できない。
普通に生活している人にも便利だし、アルツハイマーの人にも役立つ。

Image Recognition based on Gaze information
一つの人間の拡張になるとかんがえている。

Aided Eyes の最近の成果。
世界最小のアイトラッカー。
ほとんど普通のカメラと変わらないくらい。
サッカーしながら、なんでパスが通らなかったかがわかったりする。
ライフログが生活に組み込める時代がやってくるのではないかと期待している。

Augmented Eyes
視覚/知覚/記憶とコンピュータの結合
ネットワークで共有させる体験

「視点」の拡張
1st Person Vision
視線の拡張はこれだけでは無いと思っている。
一流のアスリートは自分がどういうフォームでやっているのか、
どういう姿勢なのか客観的にみることができる能力をもっている。
自分の目を強めるというだけでなく、対外的な視点を持てる。
Out-of BOdy Vision
他のものに乗り移ったり、他の人の視点に乗り移ったり。
それもある意味拡張。

Out-Of-BOdy Experience
ゆうたい離脱体験



Flying Eyes :
一昔のコンピュータが空を飛んでいるようなもの。
カメラ付き。
自分の視点を外に出すプロジェクトをやっている。

■自由視点による新しいコンテンツ撮像方式
■体外離脱視点を利用したスポーツ支援
■飛翔体へのテレプレゼンス

映画の世界では、クレーンを使った撮影がよく使われている。
機材があれば、空中からの視点で撮ることができる。
未来のワールドカップはラジコンヘリが飛翔してくれる?
運動会で、子供を追いかけて撮影してくれる?

FlyingEye : camerawork
ずっと追いかけていってくれる。
映画演出的に、人に回り込むようなカメラワークを作っている。
ドラマの片鱗みたく感じることができる。犯人が捕まる瞬間のような感じ。
サッカーのシュートの瞬間を撮影すると、かなり安定して、迫力のある映像が撮影できる。
新しい撮像、新しいスポーツ中継、新しいコンテンツの撮影に使える。

FlyingEyes: Sports Assistant
自分自身を外から見ている、客観的な映像を作る。
トップアスリートは出来ているかもしれないが、普通の人でも出来るように。
自分がどういうフォームで走っているのか、目の端で見ながら走ることができる。
素振りをしている時に、自分を後ろから見たりすることができる。
スポーツアシスタントにはとても向いている。新しいコーチング技術に応用できる。
水中ロボットも作っていて、泳いでいるフォームを撮影することもできる。

Flying Telepresence
飛翔体にジャックインする。
自分自身がどのくらいすり抜けられるか?などの感覚が共有できる。
原発事故現場を調査したり、
ヘリコプターで新しいゲームができるかもしれない。
タケコプターの現実的なソリューション。



Cat@log
自分がもしネコになれたら。。。というコンセプト。
猫に小さいカメラ、振動センサーをつけて、
猫が「いまご飯たべてます」とツイートするような仕組み。
猫が顔を足でなでているような動きを認識したり、
階段を降りていく様子がわかったり、窓から外を見ている様子がわかったり。
首の動きがご飯を食べている動きになったり。
猫もソーシャルネットに入れる!
外から見てはわからない、猫同士の視線が垣間みれる。

自分の目が拡張される。
自分の目の視点が外からのものに。
他のモノの視点に自分の視点がなる。



HappinessCounter
健康支援プロジェクト
私たちの幸せをデジタル技術でどうエンハンスできるのか?
30%位の人は独り住まい。
一人で暮らしていると寂しい。どうやってデジタル技術で救えるか?
「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」
我々は脳が楽しいから笑うのだけではなく、
笑う顔をすると、自分の脳もポジティブになる。
身体心理学。



Stack F Martin L Stepper S 1998
鉛筆のくわえ方が縦か横か?口角があがるだけでポジティブになる。
身体というのは、脳の周辺機器ではなく、
脳も体の一つでしかない。

日常生活で笑顔を認識します。
化粧鏡で、にっこりすると「チャリン」と鳴る。
鏡の前でにっこりすると、FBに投稿される。
もう一つがチャレンジングで、冷蔵庫に電磁ロックがかかっていて、
笑わないと冷蔵庫が開かないようになる。
毎日、ちょっとニッコリして、自覚的に笑うエクササイズをするようになる。
実際にフィールドテストしています。
笑顔の度合いを数値で表し、
10日間くらい、ご老人の家に導入して試したことがある。
最初は笑っているのだが、ぎこちない。
10日後は、幸せそうな自然な笑いになってきた。
エクササイズすると、自然になってくる。
自然に笑えるということは、笑う時にぎこちない人よりも、
幸せに近いんじゃないかと思っている。
メンタルなヘルスケア

Ubicomp 2011 でデモしてきた様子。
普通のデモは辛辣なデモを受けるが、
このシステムの場合は「いいね」というポジティブな評価ばかりであった

スマイルハピネスミーティングルーム。
部屋にハピネスカウンターをつけて、笑わないと会議に参加できないようにした。
ボスも満足(笑

身分証明書の写真がムスッとしている。
笑いは活性化したりする。
テレビ会議システムも、参加した人がどういう笑顔を作っているか、
エンハンスしても良い。

The Science Behind the Smile :世界的にも研究されている。
笑顔で開かない冷蔵庫は、本当に悲しい時に開かなくなって、もっと悲しくなる。
UI は便利だったら良い、便利至上主義といったところがある。
ヘルスケアに関するものを作るとすると、
毎日腹筋するような、ユーザーが積極的にやるような
インタラクションデザインが重要になってくる。

ライフフログを続けるモチベーション
バッジもらえたり、
小さな充足感が組み合わさって、大きな充足になる。
デザインされたチャレンジ、不便さ。
どうやって不便を設計するか。
利便性をデザインする。何もしないのが究極のインタフェースだが、
ウェルネスは何かさせないといけない。
究極的には何もしないもの、何かさせるものとの対比。

ゲーミフィケーション:ゲームに利便性を求めるとスタートしたとたんに終わる。
そうじゃない。不便さを考える。

不便な電子レンジ:使う前に少し運動しないとレンジが使えない。
生活の中にあえて不便なものを取り込んで、
エクササイズを促進するようなシステムが作れる。
うまい不便、面白い不便の作り方にはいろんな可能性が秘められている。



モダンタイムズ(チャップリン)
当時の便利な機械はそんなに便利ではない。
コンビニエンス、便利なことは良いことなのか?考えていくひつようがある。


http://lab.rekimoto.org/projects/squama/

Squama:
建物の拡張。
プログラムできる建物というコンセプト。
従来、空間デザインは、固定的な外部との隔壁であった。
石のような堅いものであった。
未来の建物は状態が変化したり、住んでいる人によって
変化する空間を変えていくような、
ハードウェア的なものから、ソフトウェア的なものになっていく。



カメレオンは色が変わる皮膚。
NIKE SPHERE macroreact 汗によって通気性が高まるウェア。
空間の中に展開していきたい。

液晶の板があって、透明度が変わる素材がある。
壁全体を構成すると、壁であったり、窓であったり、自由に構成できる。
Boeing 787 の窓の透明度がコントロールできる。
10cm 角ぐらいの平面に割り当てていて、
全部が不透明だと壁っぽい。
部分的に隠したり、部分的い見せたりすることもできる。
アンビエントディスプレイとしても使える。
空間にはいっている素材として使える。

実世界マスキング
Realworld Pixelization (masking)
隣の家の人と目線があってしまうと気まずくなってしまう。
開放的にしたいという要求と、閉鎖的にしたいとう要求がある。
オープンとプライバシーと矛盾した欲求。
人の動きに応じて、絶妙なモザイクをかけることができる(笑

プログラマブルな建築があると、両立することができる。
窓から見えるイヤな看板だけマスキングするようなプログラミングできる窓が作れる。

Programmable Shadows
窓から太陽が見えるのはいいんだけれど、自分が居るところは日陰になって欲しい。
太陽の日照性がプログラマブルな建築材料として使えるようになる。

最近、透明液晶が注目されている。
細かい精度で濃淡を作ることができる。
テレビの値段がとても安くなっていて。
ガラス板がテレビより高くなる。
40インチの高級ガラスの方が、40インチのテレビよりも高価になっている。
近い将来そうなっていくかも。

Surface Computing
壁面前面を使うコンピューティング
身体感覚を使ってはいるが、以前コンピュータへのインタフェース
実空間を快適にするのが目的。コンピュータは手段。



PossessedHand
これが一番未来的。
去年の TIME Magazine の世界の50の発明に選ばれた。
マイノリティーレポートはジェスチャでコンピュータを操作するもの。
逆にコンピュータがジェスチャーをコントロールできれば、
リハビリや、踊りの動きを伝授するようなことができる。
筋電の刺激を与えて、指をコントロールできるようにする。
うまく学習していくと、腕にアタッチメントをつけて指をコントロールできる。
USBの信号で、指が動くようになる。
身体技能。ピアノの練習。動く練習ができる。指ごとに独立してコントロールできる。
薬指と小指は一緒に動くが、かなり細かいコントロールができることがわかった。

自分の指が方向を指差す、未来のナビゲーションシステムができる(笑
いろんな応用を考えている。
楽器練習、琴。指でどの弦をひくか?
全く弾けない人が引けるようになるものではない。
技能を習得する時に、指に刺激があると、より効果的に使える。

今までとは違った価値を持てるようになる。
ハンマー投げの室伏選手の論文。
Development of a System to Measure Radious of Curvature and Speed of Hammer Head
during Turns in Hammer Throw.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ijshs/3/0/3_0_116/_pdf


http://kojimurofushi.net/blog/2011/01/post-ff94.html
ハンマーの軌道を音に変換して、その音を聞きながら練習する。



Oscar Pistorius ; 南アフリカの義足の中距離選手。
オリンピック初の、義足の選手。400m。画期的なこと。
テクノロジーが進むと何がパラリンピックか?
身体を拡張するということは、境界を超えるようなことがいろいろ発生する。

人間が年齢とともに減衰していくと考えると。
人間の老いに従って、どう補助してしていくか?どう追求していくか?
次世代のインタフェース研究につながっていく。

人馬一体:
どこまでが人間でどこからが技術か、の境界が消失している。
いい車だと、運転するという境界が消失する。
インタラクションデザインの一つの目標。
HCIはインタフェース的なところを意識してします。

Human Computer Integration と考えている。
究極のテクノロジーは人間自身を進化/強化/拡張させる。あるいは再デザインさせる。

農耕時代>工業時代>情報時代
ユビキタスコンピューティングの世界。
今は逆に、スマートグリッドなどエネルギーの話になってきている。
工業をコンピュータでどう効率化するか、一段戻っている。
情報は産業が進んでいくのを戻りながら、さらに影響を与えていっている。

情報産業論(梅沢忠夫)

東京大学歴本研究室
ソニーコンピュータサイエンス研究所
Koozyt

奥さんにアイデアを言って、ダメだしされて、発表内容を考えています(笑



Q:
Apple やサムスンの訴訟の件で、暦本さんの過去の特許がリファレンスされていますが?

A:
One More Thing
Apple の主張するマルチタッチ特許は Jun Rekimoto の Smart Skin (2000) が根拠となって自明の事実となった。
複数の指でコントロールできるのは SONY の中でも疑問視されていた。
発想法的には、紆余曲折があって、
最初は WearableKey 人体通信をやっていた。
Apple がそれを独占することは良く無い。人類の資産である。
なんで SONYが iPhone を作れなかったか?
説得できなかった自分の反省材料でもある。

Q: 研究で人をクスっとさせるのはポリシーでしょうか?
A: 会場の方が笑ってくれるのが一番うれしい。すごく面白いものだと笑ってしまう。
笑ってしまうくらい便利。笑ってしまうくらい不便。笑いを誘うのは良いのではないか?
そこそこでもいいから、クスっとするものを考えている。

Q: デバイスから社会になってきている。社会制度の関係について。
A: 正直ちゃんと考えていない。単体ではない、社会そのものの仕組みと人間がどう結びつくか?
単体のガジェットではすまない。

Q: どうやってアイデアを出しますか? ディスカッションか、一人で考えるか?
A: 途中で何かを捨てて、途中で組み替えるのが大事。

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よい問題に着眼することがまず大事
解決できない問題を扱っても仕方ない。
すでに解決された問題を再度解いても仕方が無い。
しかし、アイデア(解決策)が先に来て、そこから問題を逆算することもある。
最初の思惑と違う問題にしてストーリーがつながることがある。
何を問題とするかで、欠点と利点は紙一重。
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アイデアだけでは重要ではない。アイデアに価値を与える。

マウスのコントローラは、紙送りのセンサーが元であった。
問題とソリューションは固定的ではなく、ソリューションが問題解決を生み出すこともある。
欠点を生かすような問題が生まれたりもする。

Q: 電気を使ってむりやり指を動かす。学習効果は?機器を外した時にどうなるか?
A: 効果はあります。
自分の指の中にメトロノームに入っているようなもの。
長期的にやらないとわからない。研究の余地がある。
リハビリテーション。動かそうと思っている指をサポートして動かしてやると効果がある。
回復が早くなる。最初はコンピュータがサポートしてあげるなど。

Q: 最近の SONY CSL のご活動を紹介してください。
A: いくつかコラボレーションしています。ハピネスカウンターは SONYの技術を使っています。
こういう話を次世代の商品にしたりというのは考えています。

Q: 現実世界からはなれて、VRに没入していくような世界があると思います。
A: 自分の住んでいる現実を拡張したい。リアルが無いのは自分の興味とは違う。
ユーザインタフェースとしては近いは、どこか現実に着地していたい。

Q: ARは1960年代から。。今日の研究が現実に浸透していくのは?
A: NaviCam は 15年くらい。研究してから10年くらいかかる。
だれかが商品にしないといけない。研究者だけでなく、人間の力で実現しないといけない。
研究したら10年後に必ず実現するわけではない。
誰かがすごく頑張れば、Appleの前にiPhoneが作れたかもしれない。

7/18/2012

[&] Stack Overflow - The Cultural Anthoropology of Stack Exchange



The Cultural Anthoropology of Stack Exchange
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Google チームに感謝します。
先ほど、同じ質問をしようとしていて、ジョークを言うタイミングを外してしまいました。
Stack Exchange のチーフof スタッフ、Alex Miller です。
最初の社員、Jarrod Dixon もいます。
冗談は文化や文脈に依存しますので、隣の人が笑っていたら、とりあえず笑ってください!

Stack Exchange はどれぐらいの規模なのでしょうか?
Stack Overflow だけで 2億5300万のページビューがありました。
2500万人のユニークユーザーが訪れました。
単なるアクセス解析ではなく、
実際に一人一人の人間として数えた時に、これだけの人数が訪れました。
これだけ人数が多いのですから、通常の人間同士のやり取りが
当てはまるわけではない。
むしろ、これだけの人数が居るのだから、人口でいうと「国」のレベルになる。
世界47番目に人口の多い国となり、米国テキサス州につぐ、第三位の州になる。
これだけの人数が居るので、文化人類学的な視点でとらえることができます。

文化人類学とは何か知っていますか?
正直私も最初は知りませんでした。
かなりの数の人間が、インタラクションして社会を形成することを研究するのが
文化人類学です。
文化人類学でいうと、サハラ砂漠の南部にいる部族を研究する。。と考えがちだが。
そういう研究をするわけではなく、教訓として学び、新しい社会を作るのに役立てている。
それを考えるためには、コンピュータが登場し始めた時代、
歴史を振り返って考える必要があります。

メインフレームです。使った事がある経験の有る人は居ますか?
当時はメインフレームは演算するためだけに使われていました。
当時は運が良ければ、結果が出てきました。二週間に1回の給与計算などに使われていました。
ソフトウェアデベロッパーといっても、その当時は単なる技術屋でしかありませんでした。
そして、もうすこし時代を進めてみますと、
コンピュータ的なものが登場し、一般の人が使うコンピュータが登場してきました。
そのスピードは非常にゆっくりでしたが、コミュニケーションも通信もできるものでした。
この当時の通信スピードは 300ボー でした。

そしてその時に大きく進歩したものに、スマート端末があります。
なぜスマート端末かというと、カーソルで操作でき、読むのも書くのも
ある程度のスピードで出来るようになったからです。
その頃、電子メールやユースネットでコミュニケーションできるようになったのです。
しかしそうはいっても色々な制約がありました。
制約があったゆえに、いろいろな側面もありました。
その中で大切な点は、クライアントサーバーモデルではなく、
情報をフォワードするタイプのものでした。
自分のところで書き込んだデータをローカルに保存しておかなければいけませんでした。
したがって、メッセージを受けていて、引用しようとすると、
メッセージを全部引用した上で返信しなければいけませんでした。
それを見て、やっと全体を把握することができました。
その当時からユースネットが使われるようになってきましたが。
ユースネットというのは非常にあら探しをするというか、非常に細かいところを
見て指摘するという文化でした。
なぜかというと、ユースネットはデベロッパーによってデザインされていて、"R" キーを押すと、
引用して返信するという仕組み、文化が形成されたわけです。
したがって前の人が何を引用したのか、というのを細かく見る文化になってしまった。
何度も「ナンセンスだ」としている文章を引用。
そういうわけで、あまり友好的な文化では無かったのです。
ひとつは、"R" によって文化が形成されていったのです。

建築家はこれらのことを良くわかって建築をしてきた。
例えば、公園の中でコンクリート製のテーブルと、椅子を用意すると、
必ず老人がやってきて、チェスし始めるようになる。
トレビの泉:観光客が多い。トレビの泉の後ろに大きな坂がある。
その坂を登るためには階段があるのだが、実際には、休憩する椅子として使われている。スペイン階段。
ニューヨークの再生を計画した時に、同じような階段を作りました。
しかし実際には階段が行き着く先は何も無い階段でした。
この中でもっともクレイジーな点として、目的は達成されたのです。

デベロッパーもそういう意思決定は無しに、ソフトウェアを作ることにかんしては、
何世代も同じように、開発をしてきたのです。
まず最初に話したいのは、Stackoverflow を作っていこうとした時に、
5つの大切な点を考えました。

1:第一印象が大切。
金融街のデモの写真:このグループの人たちは、どういう人たちかどうかがすぐに分かる。
サインを抱えていて、賛同する人は近づき、反対する人は離れていく。
風貌から、強力なメッセージを発している。誰もスーツを着ていない。
なぜかというとスーツを着ている人は決してデモにフィットしない。

Stackexchangeを始めた時に、ネット上の Q&A サイトはどうなっているのか調べてみました。
最初は Yahoo! Answers というサイトでした。「何聞いているの?」
質問形式ではあるが、さっぱり何のことだか分からない。
「車の一酸化炭素で死ぬ事ができるか?」「一番最近に食べたものは?」とか。
実は Q&Aサイトでは無い。
自分の宿題をやりたく無いティーンエイジャーの、女子生徒向けのチャットルームのようなもの。
ある意味、巨大なチャットルームなのです。

Answers.com というサイト。
「自分の知り合いを精神病院に送り込むためのアドバイスが得られる弁護士は?」など。
こんな質問というのは、答えること自体が難しいし、
サイトを熟知していたとしても、バラバラでわけのわからない質問ばかり。

askville (amazon)
「自分の人生で正しい選択をするには?(スペルミスあり)」
「この方程式の解き方に関しての質問」
このサイトの中で一番よく答えが書かれていたとしても、答えそのものが書かれていないものがある。
このサイトの文法、スペルミス、質問のクオリティを見ても、
サイト全体の品質がみてとれる。

Stackoverflow の場合はどうでしょう?
「マルチグリッド、細かいものの実装法」
その道の開発者であれば、何のことだか分かる。
その道の専門家では無い場合は、全くわからない。
私どもが資金を得ようとした時、
投資家がWebサイトを見た時に全く訳が分からない、恐ろしい。と言われた。
我々の回答としては、「それが正しいのです」。
そこがポイント。開発者でなければ、こういうサイトに属していないので、
このサイトから出て行く。
統計学の専門家であれば、理解できるし、参加できる質問があり、
専門家でなければサイトから出て行く。

カテゴリごとに絞った質問サイトはあるが。
askvill (amazon)では、
「こんにちは!私は20歳なんだけど、高校にはほとんど行かなかったので、
基礎の算数しかわからないんだけど。。。。」という質問。
「オンラインでアパートに済むための申請をしたいんだけど。。。」というスパムが残っている。
スパムが投稿されたのが13時間も前なのに、今も残っている。だれもそれを削除していない。
「第一人称」と非常に関係している。このサイトのことを誰も気にしていないと思ってしまう。

StackExchange の数学サイトを見てみましょう。
こちらの方は、数学の分野で、数学を専門としている人たちの議論の場となっています。
実は数学には二種類あって、簡単な数学と、研究用の数学サイトもあります。
大学の教授によって回答できるくらいの問題は簡単すぎて、研究用の数学サイトには投稿できません。

■2:投票
投票は重要な用途で、良いコンテンツを生み出すためにも投票は大切。
良い貢献をしてくれた人に対して評価を与える、認知する意味で、良い結果をもたらします。
もっとも最近のコンテンツではなくても、良い質問と回答には、良い点がついている。

例えば、ある掲示板で「携帯電話が壊れた」という書き込みがあると、
他の人々は、自分の携帯も壊れたことがあるとか、自分はどう直ったとか書き込む。
正しい回答が分かるまで、多くの書き込みがあり5ページくらい進まないと正解が無い。
質問した人自体も、最後まで見ているかどうかわからない。
果たして回答がでるまで全部見ているのか?
しかし、この投票というシステムを使うと、正しい答えが一番上に表示される。
質問に対する回答がすぐにわかる。途中に投稿している会話に関しては、省くことができる。
だからこそ、投票がある。

現実にはもう一つ要素があって、「評判」が重要。
Stackoverflow で時間をかけていろんなことをしているトップの人たちを紹介している。
どういったバッジを獲得したのか、その人たちの人となりも分かる。
面白いのはシリコンバレーの人はトップの中に1人しかいない。
フランスとかニュージャージーとか、いろんなところから来ている。
トップユーザーだけでなく、一人一人がポイントを獲得している。

サイトを使い続けると、自慢できるくらいポイントが溜まる。
人物カードが表示されるようになり、中身はユーザーが編集することができる。
403k の Jon Skeet が現状のトップで、それ以上のレベルはモデレーターしかいない。
これらのレベルの人たちは、Stackoverflow の社員と同じくらいのことができる。
第一印象のところでも話をしたが、
サイトで何を獲得してきたのかを見せびらかすことができる。

バッジの運用について。バッジとしてユーザーの行動を導いていこうという意味もあるが、
バッジによってユーザーが自慢できるようにするもの。
インターネット上でバーチャルなバッジをもらってどうするの?という話もあるが、
心理学上の鉄則を考えると、実際には有効に機能する。
他の人が自分をどうみているか?人間はとても気にするもの。
だれから靴をほめてくれたら、その靴を好んで履くようになる。
ほめてくれるのは、たった一人でも良い。
システム上、そのようなことをやっている。
良い行動を促進するために「Editor」というバッジがある。
犬のトレーニングと同じこと(笑

あるいはこういった情報を使って、職探しにも使えます。
Stackovewflow での CAREERS2.0 を見ると、評価やバッジを使って職探しができます。
こういった素晴らしいアイデアがあって、それらを使っているわけですが、
それらを統制していく仕組みが必要になってきます。
そういった力を持った「モデレータ」がいます。
そのモデレータをきちんとトレーニングしなければいけません。
従ってシステムとして、使えば使うほど、いろんなことを学んでいく。
学んで行く過程で、モデレータが力を持っていくことができます。
評価が高くなればなるほど、サイトで出来る事が多くなってきます。
大切なことは、評価が高いほど、優秀なデベロッパーであるとともに、
サイト良い行動をしていることになる。
2万ポイントぐらいで、ありとあらゆることができるようになる。
コミュニケーションも重要。
サイトの中で通常の質問と回答の邪魔になってはいけない。
ほとんどの人は、回答が欲しいから書いている。

meta stackoverflow は 7% くらいの人が使っている。
これは stackoverflow はオペレーション、政府の役目を果たすのが meta stackoverflow.
これは長期間ディスカッションするもの。
短期間で話し合う場合にはどうしているのか? その場合はチャットしている。
チャットは meta よりも、人数が少ない人々で運営されている。
今、その時に、サイトをどのように運営していくのか話し合っている。
モデレータ専用のラウンジなど。
今のサイトが直面している課題などを話し合っている。
そういった政府的な機能、インフラは素晴らしい。

そしてstackoverflow のブログもある。
コミュニティーに対して情報を発信し、構造を維持していくためのブログ。
社会が通常に機能するためには、法律を制定する。ルールを作ること。

最後に:
フリーTシャツを差し上げます!
「We hate Fun! 楽しみなんか大嫌いだ!」がモットーです。
大切なコンセプトです。
楽しむためではなく、人を助けるため、困難に回答が欲しいからやってきている。
楽しみというよりも、いろんな事柄から、離れて、回答をきちっと見せることが重要。
何を質問しても良いけれど、何を質問してはいけないというルールは無い。
プログラミングに対して、本当の質問で、事実としての答えでなければいけない。
そして、その質問として良く無いものに対しては、その質問をクローズしてしまう対策をしている。
これも質問自体がクローズになってしまっても、クローズになる理由も正しく示している。
ただ、質問をクローズすることにとって大切なには、質問そのものを削除してしまうことではない。
スパムであれば削除するが、
ルールに従わない質問は削除するのではなく、クローズにする。サイト上には残る。
皆がこういう質問をしてはいけないという悪い例として残しておく。

かなり古い喩えですが、
海賊を見せしめに公開処刑するのと同じようなこと。

クローズの理由。
1 全くのコピー。すでに誰かが質問して答えているもの。
だぶってしまうような質問をしないように。
答えがでているのに、再び答えるような不必要なことをしなくても良い。

2 カテゴリーが全く違う場合。プログラミングの問題でない投稿など。
これが「第一印象」と深くかかわっている。
プログラミングに関して答えを見つけることが目的なのだから。
(その後、workplace に関する専用の質問投稿サイトも作りました)

3 建設的ではないという意味でクローズされまる。
「Webフォームと、MVC開発者とどちらが良いか?」という不毛な議論のための議論
本当の目的のためには邪魔になってしまうもの。
事実、専門性を生み出すための回答を期待している。
意見、議論、論損、永遠と続くディスカッションを引き起こすものでしかない。

4 本当の質問ではない質問「いままで作られたことのないような素晴らしい携帯アプリのアイデア」
これに対して素晴らしいアイデアがあったとしても無料で書き込む人が居るでしょうか?
この質問は曖昧であるし、不完全であるし、定義が不明確。
合理的に回答することができない。
質問としては、聞きたいから質問しているわけではない。本当の質問ではない。
議論を投げ込みたいから、書いている質問でしかない。
質問が1行しかないのに、回答で本ができてしまうようなものは良くない。

5 ローカライゼーション(局所的な質問)がひどいもの
ソースコードの間違いを見つけさせる質問とか。
ある特定の人にしか役立たないもの。

質問しているひとその人自身のことは気にしていない。
1人の質問に対して、3人が回答。10人が投票する。
しかし、毎月50人くらいの人が検索によって導かれ、
質問と回答を見続けることになる。
すなわち、他の人に役立たないものに対してわざわざ回答する必要は無い。

韓国のソウルの写真:
なぜこの写真かというと、ソウルは 2500万人。StackOverflow と同じ人数。
2500万人のコミュニティにおいて、どういった複雑なことがあるのか?
そして人種も、政治的、宗教も含めいろいろなバックグラウンドの人が居る。
したがって、文化人類学的な手法を使って
ソフトウェアデベロッパが、社会を作り出す、形成していくことを考えて
Stackoverflow は出来ているのです。